「御心が分からないと悩むあなたに」

「御心が分からないと悩むあなたへ(3) ~御心って保険じゃないし、安心でも安全でもないよね」

 〈マナケンのコメント〉
昨日の投稿には、M牧師からのコメントが。それが、あまりに秀逸なので、以下にご紹介。コメントの前半部分を転載します。

 何らかの重要な決断の際に御心を求める。その行為の裏側には、「不安なので失敗したくない=神の御心なら上手くいくだろう」という思いが潜んでいるのかもしれません。
失敗をすら共に歩んで下さる神、神の願う道は十字架に至る苦難を経験する道といった聖書の提示する道は消えてしまっているかもしれません。

〈御心保険〉
 以上です。御心を求めるのは、真摯な信仰姿勢。でも、無意識に失敗を恐れて、御心という保険に入ろうとの思いが隠れているというのです。これは当たっていると思います。テレビCM風に言えば、「クリスチャン皆さんへ、重大な決断の時こそ、不安なあなたに御心保険」ということ。「この保険に入っておけば、あなたの決断と実行は失敗しない」というわけ。
 失敗を過剰に恐れる現代人、特に、失敗した自分を受け入れられない今どきのメンタルの持ち主には、「御心保険」は必須なのでしょう。そのように御心を求めるという行為が実は、「御心保険への加入」を願っているという場合もあるのでは?

〈保険加入は必要か?〉
 では、この御心保険、加入の必要があるのでしょうか?もっと、確実で安心な保険契約を既にクリスチャンは結んでいるのでは?それは失敗した者を見捨てず、共に歩んでくださるという保険契約。それは、「安心して失敗できる保険」。自分が加入しているって知ってました?
 思い返せば、旧約時代の契約からしてそうでした。アブラハムは不信仰からの勇み足。シングルマザーとその息子を追い出すという「下衆の極み」。それでも、神様は契約破棄をせず、約束を果たし御心を成し遂げられました。モーセなんか、御心そっちのけの正義感から大失敗。「殺人および遺体遺棄で指名手配」です。御心を無視した殺人犯とさえ、神様は共に歩んでくださいました。
 失敗を免れないお互いですが、大抵は、アブラハムほど「下衆」じゃないし、モーセほど「凶悪」でもないでしょう。だとしたら、間違いなく神様は失敗した私たちと共に歩んでくださるでしょう。(だからと言って、自分のしたいようにしていいわけではありませんよ)。
 というわけで、クリスチャンは「安心して失敗できる保険」に加入済みであることを、契約書(聖書)を読んでご確認を。その上で、御心を考えてみては?

〈御心に従うのは、時に苦難の道〉
 では、御心保険に加入したから安心で安全かと言えば、そうでもないようです。例えば、創世記ヨセフのヨセフは、御心保険加入者でした。彼は、先に夢で将来の自分を啓示されており、御心の確信がありました。しかし、夢の実現までのプロセスは、兄に殺されかけ、人身売買をされ、性犯罪の冤罪で投獄され、施した恩を忘れられ絶望と、20年程散々です。神様と共に歩んでいてこれなのです。
 そこで、自問していただきたいのです。あなたがヨセフで先に御心の確信があったら、ヨセフの同様の道を歩む決断ができるでしょうか? その道の途中については、安心でも安全でもないとわかっていたら、どうでしょう?

〈牧師という事例〉
 牧師の中には、「自分は神様に嵌められた」と語る方も。これは不敬虔なようで、敬虔な発言だと思うのです。最初から牧師になるとの御心は示されず、一歩一歩導きに従い、御心を祈り求めて行ったら、牧師になっていたというパターンです。どこに行くか教えてもらえずに信頼してついて行ったら、行きたくないところへ到着したわけです。
 牧師ほど、コスパの悪い職業も珍しいでしょう。恐るべき「高ストレス・低収入」です。もっと、悲惨なのは牧師夫人で、「高ストレスで無収入!」しかも、「夫の召しの巻き沿い」であることも。御心が先に分かってしまったら、御心に従えなくなることもあるというのが、私たちの正直な現実でしょう。
 ヘンリー・ナウエンは、著書の中で、イエス様がペテロについて「若い時は、自分の望むところを歩いたが、年をとると望まないところへ連れて行かれる」と予告したことから、クリスチャンの成熟を示しています。自分の行きたいところへ行くのは未熟なクリスチャンで、神様によって行きたくないところに連れていかれるのが、成熟したクリスチャンです。
 御心が先に分かったからと言って、安心でも安全でもないし、かえって、御心に歩めなくなる場合もあるわけです。そう考えると「御心保険加入」より大切なのは、「不本意な御心にも従える自分」ではないでしょうか?

〈まとめ〉
    今回はM先生のコメントを受けて「御心保険」を考えました。御心は保険ではないし、加入したところで安心でも安全でもないのです。ですから、「安心して失敗できる保険」に加入済みであることを確認して、「御心保険」加入の必要性については、ぜひご検討を。

   というわけで、御心が分からないと悩む皆様には、保険加入目的でなく、御心を祈り求めることをお勧めします。