水谷潔の新しき地に踏み出だす

 

　とりわけ、現代日本の「キリスト者の消費者化」を引き起こした要因として「１９８０年代以降における生産者に対する消費者の相対的地位向上」を挙げている点は、リアルに納得。８０年代から始まっているとの感覚を個人的に持っているからです。

 

　最後の段落は、問題の本質と危惧点をこの上なく的確な文言で指摘しています。「キリスト者の消費者化」がもたらししたのは「愛」から「自己満足」への置換。愛における「他者への責任」が「教会への支払い責任」に置き換えられた結果、支払い済み故の自己満足追求を正当化し、愛という神と他者への責任放棄をもたらしたということでしょう。私には結果として「神を愛し、自分自身を愛するように隣人を愛せよ」が「神と隣人を愛する代わりに自分自身を愛せよ」に置き換わっているように思えるのです。

 

　現在の日本社会に生きる限りは誰しも「キリスト者の消費者化」の影響を免れることは困難でしょう。しかし、本当の問題は影響下にあることではないのです。本当の問題はその影響下にあること、あるいは、既に本質部分にまで影響を受けていることへの無自覚でしょう。その無自覚性が問題を深刻化させているように思えてなりません。　

 

〈その投稿をご紹介〉

　以下にその投稿を当人のご許可の上で以下に転載させていただきます。　　　

　先日、M牧師がキリスト者（この場合、より正確には教会に属する者）の消費者傾向についてFB上で議論しておられました。牧師がそのような議論をすること自体に違和感を示すご意見もあったようですが、基本的にはM牧師の憂慮している傾向はあるように思います。その憂慮に関する私の理解（多分、M牧師の理解も）は、すべてのキリスト者がつねに他者から見える形で“アクティヴ”であるということではありません。人は各々が置かれた状況によって生活は変わります。それを互いに認め合うことは非常に大切です。問題は別のところにあると思います。

 

　 財やサービスを受けるために、消費者に課されている責任はお金の提供です。1980年代以降、日本社会に基本的な物資が行き渡るようになり、生産者に対して相対的に消費者の地位が上がりました。つまり、消費者はお金以外の責任（倫理性など）については目を瞑ってもらえる存在となっています。お金さえ払えば、消費者の勝手が許される時代になっています（もちろん、生産者に代表される資本の社会に対する横暴は存在していますが、それは別の機会に議論しましょう）。教会にもこのような意識が入っているかも知れません。

 

　聖書の語る「愛」とは、他者に対する責任性であり、それに基づく態度や言葉です。キリスト者が消費者化することで、教会の習慣に従う（礼拝出席、教会の奉仕などなど）という“支払い”の責任を果たし終えることで自己の満足だけを求めることになり、神と他者へのあるべき責任性がスッポリと抜け落ちてしまうことになります。その危険はいつもあるように思います。