信仰継承、宗教二世問題
信仰継承、宗教二世問題
- 「子どもを愛し忍耐し育てる教会へと導いた牧師の言葉」
- 「子どもの身にもなってみよう～騒ぐ子どもを注意する前に」
- 「妄想福音書と妄想パウロ書簡 ～子どもを叱らず、祝福の邪魔をせず、イエスを憤らせず、子どもに倣う」
- 「子は、礼拝する親の背中を見て育つ」
- 「信仰継承、何ではなくて、何なのか？」
- 「信仰継承の再検討①～親からの相続か？本人の出会いか？」
- 「信仰継承の再検討② ～自らを経由せず、邪魔せず、モデルに」
- 「信仰継承の再検討③～焦り、怖れ、義務感？動機の自問」
- 「信仰継承の再検討④ ～親のお手柄？子どものお手柄？」
- 「無関心なのに、囲い込み？～凧上げと伝書鳩のたとえ」
- 「『無関心なのに囲い込みはする』からの悔い改め」
- 「発明としての新語『宗教2世』①」
- 「発明としての新語『宗教2世』②」
- 「発明としての新語『宗教2世』③」
- 「発明としての新語『宗教2世』④」
- 「信仰継承に活かす『宗教2世問題』①～過去に目を閉ざさず」
- 「信仰継承に活かす『宗教2世問題』②～人権尊重と信仰継承」
- 「信仰継承に活かす『宗教2世問題』③～ありがちな二極化」
- 「信仰継承に活かす『宗教2世問題』④～愛と自由と責任」
- 「信仰継承に活かす『宗教2世問題』⑤～正解の押し付けでなく」」
「信仰継承に活かす『宗教2世問題』⑤～正解の押し付けでなく」」
〈正解なら押し付けていいの？〉
クリスチャンは「絶対に正しい正解を持っている」との信念があるので、信仰継承が押し付けになりがちです。そのために、子どもが自分なりに考えながら、正解に向かい、やがて、見つけ出すように導くのではなく、「親が、子どもに正解を押し付け思考停止にして、クリスチャンにする」という信仰継承になることも。
信仰の内容は正統的でも、思考停止でその内容を信じさせているなら、カルト的ではないかと私は危惧します。まずは、「正解だから押し付けてよい」という考えを捨てて、「正解だからこそ、子ども自らがその正解に出会う助けをする」と考えてはどうかと思うのです。
「思考停止でクリスチャンにされた子ども」は、どうも、人格的に未熟な大人になりがち。思考停止型クリスチャンとなり、成熟せず。思考停止状態を脱した時、信仰と教会生活を卒業しかねず。そんなふうに私は観察しています。
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〈神様が対話的なのだから〉
旧約聖書を読むなら、神様はご自身の民に対して、時に「論じ合おう」と対話をされます。民の不信仰な疑問や訴えにも、預言者を通じて、真摯に応答しておられます。最高権威者でありながら、神様は、意外と一方通行の問答無用ではなく、対話的なのではないでしょうか。
でも、よく考えてみれば、それは当たり前かも。神様は愛であり、民との交わりを願い、心の通い合いを喜びとされるのですから。神様の愛は、対話的関係を願います。神様という最高権威がそうなのですから、神様から親としての権威を委託されている親が、どうあるべきかは明らかではないでしょうか。
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〈子どもの成長のために〉
「なぜ、礼拝いかなくてはならないの？」
「祈っても、祈ったようにならないじゃん！」
「見えないし、聞こえないし、神様って本当にいるの？」
子どもたちからのこうしたド直球の質問や疑いは大切にしたいもの。なぜなら、それは、子どもの信仰を育てるチャンスだからです。質問されたら、親は喜ぶべきではないでしょうか？
もし、子どもが親を困らせるからと気を遣うなら、親が応えられると期待ができないので、問えないとしたら、それば残念なことでしょう。ましてや親自身が信仰停止のように「聖書に書いてあるから」とワンパターンで一刀両断すれば、子どもはどう感じるでしょう。親が「不信仰を神様は喜ばれません」とか言って、回答を拒否すれば、子どもは親をどう思うでしょう。
こうした疑問や疑いに対して、親は必ずしも、教理的な模範解答をする必要はないでしょう。論理的な説得が唯一の回答ではありません。自らの信仰体験を証しすることもよいでしょう。信仰のリアリティーや喜びを語ることも、模範解答の一つだと私は思っています。
知的に納得する子もいれば、知的理解できなくても、感性で真理を感じ取る子どももいます。親の本気を感じ取り、これは、本物だと思う子どももいるでしょう。
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〈親自身の成長のためにも〉
成長するのは、子どもだけではありません。問われた親が成長するのです。いいえ、もし、親自身が「思考停止型クリスチャン」なら、それを卒業し、成熟に向かうチャンスなのです。「育児は育自」と言います。信仰の世界でも、子どもの信仰を育てようとすることは、自らの信仰を育てることにつながるのではないでしょうか？
子どもに問われて応えられない自分に向き合う時、基本的教理を自らのものとしていない未熟さを自覚します。「礼拝が大切、出席」と子どもに求めるなら、親自身が主体的に喜びをもって礼拝をささげているかも問われます。
まさに「育児は育自」です。信仰者としての自らを育てる親こそが、子どもを信仰者へと育てられるのでしょう。信仰継承とは、親が子どもに信仰を押し付け、一方的に子どもを育てることはないでしょう。親と子が対話を通じて、共に成長していくことが、信仰継承のプロセスではないでしょうか。
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〈実際の経験から〉
成熟したクリスチャンの中には、思春期に親に激しく疑いをぶつけたり、怒鳴り合いの激論をしたりという方が少なくありません。逆に、大人になってから、信仰を離れてしまう方々には、そうしたプロセスを持たず、教えられたことを鵜呑みにしてきた方が多いように観察します。
信仰や教会生活は一生ものであってほしいと願います。長い目で見るなら、押しつけや問答無用ではなく、真摯に向き合い対話することの必要性を思います。
さらに記したいことはありますが、中心的なことは一通り終えられたと思います。「宗教２世」という言葉が誕生し、普及した社会に生きる皆様にとって、一連のシリーズが指針や参考になれば、感謝なことです。