水谷潔の新しき地に踏み出だす : 「信仰による自己肯定感低下②～曖昧さを生きる力」

信仰生活

「信仰による自己肯定感低下②～曖昧さを生きる力」

〈福音理解と現実認識〉

　自己肯定感のプロによれば、クリスチャンが「１００か０かではない現実世界」を正しく認識するために必要なのは、「正しい福音理解」あるいは「正しい世界観」。イエス様が来られて被造物世界の贖いは決定済みですが、再び来られるまで完成はしません。神の国は到来していますが、完全な到来はまだです。

　ですから、現実世界は曖昧。世の中にも真実はあり、時に教会に偽りがあることも。未信者の中にも真実な愛があり、クリスチャンが欲まみれであることも。「１００か０か」ではないのです。イエス様が来られるまでは、教会もクリスチャン個人も「１００と０の間」なのです。「どっちつかずの曖昧さ」の中を歩むのが現実。

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〈曖昧さを生きる力〉

　プロである師によれば、こうした「曖昧さを生きる力」がクリスチャンに求められるとのこと。その曖昧さを正しく認識し、曖昧さが与えるストレスも受け止めながら、１００に向けて、成長の歩みをしていくのが、健全でクリスチャンなのでしょう。

　このことは、近年提唱されている「ネガティブ・ケイパビリティ―」と共通するのかもしれませんが、単純に二つに分類できないことのストレスに耐えながら、安易な決断をせず、結論を保留して地上生涯を歩む力がクリスチャンには求められるのでしょう。

　多分、私たちの多くはそうした曖昧さを嫌い、そのストレスを避けるために、福音を単純化し、二元論的にとらえたがるのでしょう。そして、自分も他者も、世界のすべてを二つのどちらかに当てはめたがるのでしょう。神様の思いをよそに、自らに０点を付けます。そして、そのひずみは多くの場合、自分を苦しめ、生きづらさを与えます。

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〈聖書の読み方の検討も〉

　自己肯定感の低さに課題を覚えるクリスチャンは、一度、福音理解が二元論的ではないかを省みてはどうでしょう？それが自らの認知の歪みを強化していないか、考えてみましょう。そして、聖書を「神様の願う理想を記す書」としてだけでなく、「人間世界の矛盾に満ちた現実を記録し、描写している書」としても、読んでみてはどうでしょう？

　そうするなら、「再び主が来られるまでの曖昧さ」の中を、忍耐と希望をもって歩む主の民と自らを、重ねて見ることができるでしょう。それは、きっと福音理解と現実認識を健全にして、曖昧さを生きる力を与えることでしょう。